実物のない展覧会ーExbision With Copy

 ゴッホのイマーシブ(Immersive)展がカルガリーでも開催されていたので行ってみた。入場はネットでチケットの予約をしなくてはならず、時間帯と入場人数をしっかり区切っていた。

 こういう絵の見せ方を体験するのは多分初めてだと思う。風景画や冒頭の写真のような空や海の絵では、自分がその絵画の風景にいるような疑似体験ができ、花吹雪を絵から起こしたりして、絵が流れたり動いたりするので、これもなかなか面白かった。

 ちょっと不満点を言うと、まあ美術館ではよく思うことだけれど、がらーんとした人の中で見れたら相当いいが、そうはいかないこと。私の時間帯が悪かったのか、一度この空間に入ると最後まで同じ人がそこにいることになるこの展覧会では、結構の人がいた。平日夜だからと思ったのだけれど、子供ずれもなかなか多く騒いで遊んだりして興奮気味。まあちょっぴり静かに見たい美術館のイメージ道理にはいかなかった。そして、自分は動かなくても絵のほうが勝手に動くため、美術館のような、自分が動いて次の部屋へ行って絵を見たりする楽しみというのはない。

 明るくって、大きくって、迫力があって、雰囲気が出てる見せ方で、これはこれで面白い。だけれど、美術館だとその管内の美しさとかも手伝って、アートに触れてきた、という感覚がよりあるのは私の中では大きいかな。でももしかしたら、ダビンチ展もこんな感じで行われているし(BC)、意外とどんどん増えていくかもしれないImmersive展。

 そんなこんなの感想踏まえてクライアントGと話していた。すると彼女が言った。「本物の絵って意外ときれいでないのよね。すごく暗いし、小さかったりするし。」彼女に後でこのImmersive展の写真を送ると、すごくきれいと感動していた。この展示会すらも、その場に行くより写真でその様子を見せるほうがすごく見えたりするかもしれない。

 本物かコピーか。そんなことを題材としたCertified Copy(邦題は「トスカーナの贋作」)という、どこか象徴的で感情や感覚に訴える雰囲気の、私好みの映画があった。ジュリエット・ビノッシュが主役でイタリアが舞台のこの映画では、イラン人のバッカス・キアロスタミが監督(名前がなかなか覚えられない)。

 「普通の人にとっては、本物にお目にかかるにはお金がかかりすぎたり、たとえその機会があったとしても、その価値を理解し感動することはなかなか難しかったりする。そこでコピーとなれば、もう少し身近になり手が届きやすくなる。そうなれば本物よりも、そのコピーを受け入れて、鑑賞する喜びを知るしかないし、そのことが悪いことではない。」というような内容を監督が説明している映像を見た。そして逆に本物に出会ったとき、自分の期待が裏切られたような、思っていたものと違うことが受け入れられないというようなことがある。そうなれば、コピーを受け入れ、それで満足しているほうが幸せになれる、というようなメッセージも、この映画の男女の関係にかけ合わせて解説していた。

 後日エドモントンで開催されている同じゴッホ展を見たという友人とランチをしたときに感想を話し合った。ゴッホの絵がなくても、世界中のどこでも同時に開催できるこのImmersive展。これは思い切りこれのよさがあり、絵画展を美術館で見ることとはまた別ものと思ったほうがいい。

 美術館でさえも、もしかしたら見ている絵が本物ではない場合が多かったとしても、偽物と知らずに見せられているならば、やっぱりよく味わおうという努力と、美術館へ行くという一つのオケージョナルな気持ちが手伝って満足しているはず、かな。またなにか美術を見る機会がないかな~。秋になるし。

 また一週間💛