たとえるならナウシカーJust Like Nausicaa

 カナダ人だからといってものすごく日本人と違うとはいいがたく、魅力的な人もいれば、え?と思う人もいるわけだけれど、なんとも言えないオーラがあり、誰もに愛されるリーダータイプという、まるでナウシカのような女性との出会いがあった。

 彼女は、Lと呼ぶとして、Lは、作業療法士(OT)である。私の勤めるロングタームケアーセンターでは、OTデパートメントがあって、要するにリハビリに関することをする部所で、私達だけのオフィスがある。OTが一人パートタイムでいて、その下にアシスタント(OTA)が二人という構成。OTAは一人がフルタイムで、一人がパート(私)。去年の5月ぐらいから、専属のOTがちょっと事情のある出産のため産休に入った。Lはその間の代理として雇われたので、もともと1年という予定で入っていた。

 この施設では今までで3人の若手OTと会っているけれど、Lほどフェアーに人や事を扱えて、かつ仕事が早くてOTAの仕事も嫌がらず時々手伝ってくれて、いつも同じ情緒を保ち明るい笑顔で、本当にレジデントさんたちのためを思う心があり、それでいて感情的になりすぎないという、ありえないほど素晴らし女性だと私は思っている。ちなみにナウシカというのは、顔もそれに例えられるほど美しく、長身で運動万能のスラっとした体形。でありながら、非常にシンプルな身なりで、何が大切かをしっかりわかっているという感じ。

 ちょっと話はそれるが、情緒不安定というかムードがころころ変わる感じのカナダ人は日本人より多い気がする。それは日本人が感情をあまり表に出さないという風習があるせいなのかはわからないが、ほんとうに、Lが来たときは、「あ、これが私の思う常識だよね」とちょっと安心した。もしかしたらLが特別なのかもしれないが、それはまだよくわからない。

 とにかくLがいると、パーとその場が明るくなり安心するという感じを、きっと私以外の人々も感じていたことだろう。私の場合は週に一回稼働日が重なるだけだったのだが、その一日を何と楽しみにしていたことだろう。

 彼女はボディー&マインドをちゃんとケアーすることを知っている。カルガリーから勤務していて車で来るわけだけれど、ランチの時間は必ず外に出る。ライブラリーで借りたというオーディオの本を聞きながら、さっと着替えてジョギングをほんの15分でもする。座ってスマホを休憩中にずっと見ているというのが現代っ子だろうけれど、そういう姿は仕事場では見たことがなかった。プライベートでは天気のいい週末は必ずと言っていいほど外に出ているようだし、そうでないときは室内のロッククライミングをしたり、とにかく体は動かす。それだけではなく、友人でスペイン語に堪能な人がいるので、その彼からスペイン語を週に何回だかリモートで習ってもいるという。もちろんフィアンセもいて、この秋結婚式を挙げる予定。

 ここまで過去形で書いてきているからお気づきかもしれないが、契約の5月はとうに過ぎ、彼女が去る時が来ていた。もといたOTなのだが、なかなか大変な出産をし、双子のうちの一人は生後間もなくなくなり、もう一人はいろいろなケアーが必要な状況なため、産休を6か月延長して来年の2月に戻るか、ここでとりあえず施設のポジションを放棄するかの選択だった。私達は、申し訳ないのだけれど彼女がここで放棄して、Lが続けてくれたらと願っていた。結果、2月までの延長ということになり、Lは経営は同じ施設だけれど、ロケーションがカルガリーにあるところが同じようにまた1年の代役を募集していたので、そちらに移ることに。ガソリン代も不況により上がる一方だし、日本と違って交通費にあたるような手当はまずないのがカナダ。カルガリーのロケーションなら自宅から車で10分もかからないというから、そりゃあカルガリーがいいに決まっていると同感。

 まあ、もともとこんなに素晴らしい人が、ずっと同じ場所、しかもこのような小さな施設にいるわけはないと思っていたし、いろいろな経験をしたいという彼女も言うように、まだまだ若手で可能性がいっぱいのLには、素晴らしいOTになってほしいと私も心から願う。

 問題は代わりのOTがなかなか見つからない。半年間だけという中途半端な期間にコミットするOTはそうそういないようだ。というわけで、場所は違えど同じ屋根の下で雇われているLに週一で勤務してくれるようマネージャーが頼み、何とか来てくれることになった。とはいえ、もう一つ別の場所でもOTとして仕事を持っている彼女だから、時にリモートになる。

 それでも私達OTAにはありがたく、ことにOTAはアセスメントや様々な手続きを決定したり判断したりする権利も資格もないので、Lに最終的に流さなくてはならない仕事は日々多い。私と違いフルタイムで働くおなじOTAのKは、責任感と不安感とでLが去ることになった時泣いてしまった。

 私たちの部署を少しでも機能させるために、半日多く働くオーファーが私に来たのでとりあえず受けることに。ところが、なぜか、4時間半の勤務が30分少なめに支払われることになっていて、問い合わせると、パートタイムは15分の支払われない休憩と支払われる休憩があるという。そんなものはいらないから、だったら4時間働いて帰るよと思うところだが、15分前、つまり終わる時間の15分前なら休憩を最後に取るという形で帰っていいというのだ。なんだか、初めからそういう風な説明もなく利用されたような嫌な気分になった。そんなことを、機会あってLと話していたところ、Lも「私も週一で勤務を頼まれているけれど、新しく勤務を始めたほうはすでに働いた分のお金を支払ってくれているのに、ここは全く支払ってくれてないのよ。もちろん本当に支払いがなければちゃんと請求するから問題ないけれど。私もね、ただでは働く気はないからねー。もう、この部所のこととか気にせずに、割に合わないようならいつでもNOと言ったほうがいいわよ。」と言ってくれたので、「大丈夫、その辺は自分にいいように選ぶから。」と私。二人で冷めた話をした。

 こんな話もLとシェアできる時間は、実は私にはとても貴重でありがたいと思っている。もう少しだけLと仕事をする時間はあるようだし、そのあとはまたなるようになるわけで、なんだかガチャガチャ面白いのかもと受けとめてみるか。

 なんと、この週末から来週半ばまで、最高温度が35度前後、午前9時でもすでに20度という、日本より気温の高い日々になる。おとなりBC(ブリティッシュコロンビア州)では40度越えということで、これは非常に珍しい、記録的な6月の気候のようだ。また一週間💛