大吹雪のドライブーDriving in Snow Storm

 登山を終えた次の日、また長い時間をかけて家路へドライブが始まる。ブリティッシュコロンビア州(以下BC)とアルバータ州(以下AB)では一時間の時差があるが、バンクーバー時間で朝7時半に出発。予定では11時間、途中ランチ休憩などを入れても12時間でつくかなあ、というはずだった。

 一番の懸念は、この日のアルバータは雪であることだった。車はレンタルしたものだったが、実はかなり大型のトヨタ車だった。ダーリンはもう一段下の大きさのものをリクエストしていたのだけれど、あいにく用意がないということと、カーナビをリクエストしたけれど、それもないということで、かってに「アップグレード」してくれて、この大型車を貸してくれたそう。

 大型車は山越えにはちょうどいいのだけれど、バンクーバー市内ではまったくいごこちがわるく、駐車にもかなり大変なことがあった。それにしても、カーナビについては多分日本ではありえないと思う。日本で妹の旦那さんの車に乗った時、TVが車に普通についているのに驚いたが、こちらではもっぱら携帯でグーグルマップのカーナビを使う人が多いせいだろうか。

 大型車であろうと冬用のタイヤはついていたほうがいいと思ったが、案の定ついていない。まんまと途中から吹雪に会う。BCでは4月の中旬だか下旬ぐらいまで、冬用のタイヤに変えていないと違法となっているのに。

 この日、だんだん雪が激しくなる中、トラックは途中でタイヤチェーンを付けることを強いられて、多くのトラックがチェーン付着駐車場みたいなところに停車して、雪の降る中作業していた。

 とはいえ、BCにいる間は雪の激しい所とそうでないところなど、気候がいろいろ変わっていたのでそんなに心配はしなかった。そしてあと3、4時間で家に着くという地点で、雪崩コントロールがありすべての車が止められた。その時の映像が下。

 30分止めます、といわれてから1時間半かかってやっとGoサインがでた。この時間がなければ、この後遅い時間に襲い掛かった大吹雪に会わないで済んだかもしれない。AB近く、またはABに入ってからは要するに山の反対側なため、積雪が多くなる。通常110キロの速度で走れる高速が60キロ以下の速度で長ーい列を作って永延と続いた。日も暮れ、真っ暗になりだしたころには、雪が前からふぶいて降ってくるので全く視界が悪いどころか、錯覚で、車が動いていないかのような感覚に陥る。それほど前から降ってくる雪の速さと量がすごかった。これはかなり気持ちの悪いもので、目の悪いダーリンの横でコーパイロットとして勤めている自分だったが、途中車酔いしていた。

 さらに行くと、吹雪は方向が変わり右から激しく攻めてくる。そうなると今度はまっすぐ走っているつもりが、なぜか左よりになってしまうほど、雪の動きに目がごまかされてしまう。まったく前が雪しか見えない中、ダーリンのハンドルが雪に取られて、右へ急カーブ、左へ急カーブ、そしてついにデッチへ落ちた。

 デッチへ落ちるというのは、普通はそれでアウト。こういう時に救助の車を呼んでもたいてい道路状況が悪い中なので、どうすることもできない。1週間ぐらい車だけ落ちたまま放置されている状態も冬場はよくある。どんなに小さなデッチでもなめてはいけない。落ちたら最後と思っていたほうがいいし、しかも、「きっとダーリンが彼の車からエマージェンシーキッドをつんだろう」と思っていた私だったのだが、ダーリンは全く用意していなかった。雪を掻くスコップも、体を温めるための毛布も非常食も何もない。この辺は、私の意見では、カナダ人でない人ほどアンダーエスティメートして準備をしない。こんな吹雪の中ではみんな状況は一緒なので、他人は頼れない。みんなそれぞれ目的地に向かって懸命に走るのみ。

 ところが一つ私たちを救ったものがあった。雪崩コントロールで停車中、これなんだろう、という機能が車内にあって、私は説明書を読んでいた。そこには、ギアーチェンジとはまた別のタイヤの設定があって、沼とか砂とかにはまった場合にそれを使用する、というのがあったのだった。さっそく設定を変えてみると、ピーピーと車が音を出す。そのままダーリンがバックを試みる。何度か前後に動きながら見事リカバー、助かったのだった。

 家に着いたのは夜11時半過ぎ。こんなストレスは初めてだったが、疲れすぎて2人ともしばらく眠れず各々のことをしていた。ダーリンはその後、私があの時説明書を読んでいなかったら助からなかったと、天使の助けだったと喜んでいた。私からすれば、レンタカーした車のファンクションはずべて事前に把握するべきだし、どこへ行こうと長く山を越えるようなドライブではエマージェンシーキッドは最低限持っているべきで、冬用タイヤもついていない車で進む雪の中で不安がよぎっていただけだった。

 本当に、Take your own riskとは、一か八かやることではなく、準備を良くしていくことだろうと改めて学ぶ経験だった。

 バンクーバーにはまた行きたいと思うが、次回ドライブする際は、やっぱりどこかで一日休憩をしたいと思う。あーそれにしても、早く旅行ができる世の中になりますようにと願うばかり。

 また一週間💛