アンティークスピリットーSpirit in Antique

おやおやもう秋?と、今週は20℃行かない日々のよう。

先日、今はコーワーカーであり以前はクライアントだった、カリッサからの夕食の誘いを受け、夫婦でお宅にお邪魔した。優しい旦那さんトーマスと、ヨークシャテリアと黒猫の4人住まい。犬のほうは前回と同じように、ダーリンの横にぴったりくっついてずっとくつろいでいた。ダーリンは特に犬好きというわけではないのだけれど、子供や動物にこうやって無条件でいつも好かれるから不思議。

カリッサ達はキャンプ好きで、今年は東へ車でロードトリップをしながらキャンプをしながら楽しんだとのことだった。私たちの行ったアラスカハイダーにも、同じように車で旅をしたことがあるとのことで、いろいろ旅の話に花を咲かせた。

なにはともあれ、スチュワートの町のような、カナダの知らない一面を見れる経験ができたことはよかったね、とお互い納得。そして私たちがプリンスジョージという町で泊まったCoast Hotelに彼らも泊ったことがあるとのことだった。

一瞬遅れてカリッサが「コーストホテル!? 泊まったの?」と興奮した。「知ってるわよそこ。トイレがとっても複雑だったところよ。たくさんのボタンがあって、風が来たり水が出たり、混乱して、トーマスに、『ねえ、エンジニアのあなたならきっと助けてくれるわよね、このトイレの使い方』って助けを求めたのよ。」とカリッサ。

TOTOのエレクトリック便座は一般家庭や公共のトイレでも日本では普及していることを告げ、便座の温めも割と普通であることを言うと、「そう!!!便座が暖かくって、座ってびっくりして、え、なに!!!!???って飛び上がっちゃったわよ。」とのことだった。

一応英語でトイレのそれぞれのボタンの説明がついていたのだが、説明を読んでトイレを使うっていうのも、予想外のことだろう。

 

ちなみに、クライアントの一人の10歳になるお孫さんも去年、家族で日本に行った時にトイレにびっくりしてとても怖がり、滞在中はトラウマとなりトイレに行けなくなって大変だったという、かわいそうなお話を聞いていた。おそらく間違ってボタンを押して、噴水のような水を便器から浴びるというのが大体の経験だろう。

このカリッサはイタリア系移民のご家族をもち、旦那さんもトーマスはデンマークからの移民のご家族を持つ。カリッサのお爺さんという方が、また面白い人である。

 

当時、Harifaxというオンタリオ州の町は、アメリカで言えばエルスアイランドのように、他国から来た移民を受け入れる窓口だった。カナダの場合は、労働者不足を補うためでもあった。Harifaxに着いたお爺さんへの質問は、「いくらお金を持っているか」だった。お金がない人々は、無条件で北の肉体労働へと送られる。お爺さんは会社の寮に住みながらなんとか生計を立てていたが、イタリアには愛するカリッサのおばあさんとなる方を残していた。

 

ある日、町を歩きながら、美しい家と立派な車をみつけた。おじいさんはその目の前でたった一枚写真を撮り、それをおばあさんに送り、早くカナダに来るようにと送る。おばあさん、無条件にすぐにイタリアを後にした。

着いてみて、もちろんびっくり、すべてが嘘であることを知り怒ったおばあさん。おじいさんに、とにかく一軒家を買うように強制する。

 

とりあえず安い物件を見つけて住みだした。しばらくすると、酔っぱらった男性がドアをたたく。「酒を飲みに来た」とのことだった。なんと、その家は以前、バーで飲んだ後みんながよる、セカンドの酒場(?)だったらしい。そこで、おじいさん、「今日は酒の用意はないが、あと2週間後には用意するから、そしたらもどってきてくれ」といって、それから2週間後、セカンド酒場を営んでしまった。

 

そして当時、同性愛者はとても肩身が狭く、行けるバーもなかったとのことで、お爺さん、その人達用としてもビジネスを始めた。

 

こういうお爺さんを持つカリッサは、やっぱりどこかお爺さんの血を受け継いでいるようで、物を買うときに値切ることがうまいと自称する。しかし幼いころは、貧しい人々の住む町に住んでいたこともあって、貧困というものを目の前で見て育ったという。

 

1912年に建てられたこのアンティークなお宅は心のこもったおもてなしと共に、とても心地が良かった。しかしそろそろ引っ越すそうで、残念ながら、このお家は売ることになるそう。よっぽど物好きでない限り、おそらくこの家は壊して新たに建て替えられるだろうとのことだった。以前住んでいた人たちも、こんな風に暖く人を招いてはテーブルを囲んだりしたのだろうか。古いものもなかなかいい気がした。