カナダ人との会話に、犬は飼ってる?とよく会話の中で出てくるのだが(子供はいる?と同様に)、犬はいたらいいなあと思う。
いろいろな理由でペットはいないのだけれど、住んでいるコンドミニアム(アパートとかマンションとは呼ばないのがこちらの風習)は、動物OKなのでペットのいる住人も少なくない。
とはいえ、仕事場にはセントバーナードとの雑種であるキャッシュ(名)や、もともと迷い猫で飼い主が見つからないからここで飼うことになったという黒猫のシンバ(名)や、最近保健所からマネージャーがもらってきたグレーのきれいな模様のおてんばクリスタル(名)という猫がいるので、動物とはいつも身近に触れ合ってはいる。
キャッシュは、マネージャーと彼女の夫であるリクリエーションセラピストの愛犬で、一応アニマルセラピーという役もこなすので、ほぼ毎日仕事場に一緒に来る。リクリエーションセラピストのオフィスとOT(私たち)のオフィスが目の前なので、キャッシュとは本当に顔なじみ。とてもおとなしい犬でかわいい。
仕事場に犬というのは日本ではあまり頻繁に見ないことの一つだろう。それから、夫婦で同じ職場にいることも許される。今はマネージャーが出産したばかりなので、3カ月間の産休中。その後はリクリエーションセラピストの旦那さんが産休を取るのだそうで、これもまたカナダらしいことかもしれない。
さて犬だが、こちらの犬はみな人懐っこい、という印象があったのだが、やはりそれも偏見であり、犬がよその犬にけがをさせたとか、かまれるということはそう多くはないとしてもたまに起こる。だから、すれ違う時にじっと座らせるしつけをさせ、一緒に動かず止まって待つという飼い主もいる。
ところがやっぱり飼い主にもいろいろのようだ。ビルは違うが、同じ敷地内に住む日本人の高齢の女性がいて、時々私に連絡をくれる。先日お風呂上りに来た電話は、犬にかまれたという報告だった。狂犬病が0の日本と違って、犬にかまれたというのはとても真剣に対応されるカナダらしいが、それなのに飼い主は「ソーリー」もなく、スーッと彼女の前を通って行ったという。
幸いけがも大したことはなく済んだようだが、その後その犬と飼い主を見かけることがないので、あとから文句を言おうにも言えない。一応ビルの責任者が心当たりに尋ねたりしているようだが、たまたま尋ねに来た来客だったかもしれないし、とにかく、その場で連絡先と名前を聞かなかった彼女も甘かったのだが、大変ご立腹の様子で、私にも心当たりがないかと聞いてきたのだった。
こういうことが起こると、どうしても人種に関する面でセンシティブになる。彼女は白人に対する偏見がないようで、「どこかほかの国の人ならともかく、白人だったから、きちっとしているかと思ったけれど、やっぱり人間だわね。怖くなったて何も言わなかったのかもしれない。」といった。私は、白人だから、彼女をどっかのアジア人と軽視し、平気で非常識な態度をとれたのかもしれない、と思った。
もちろん、人種関係なくただ非常識な人だったということも大いにあるだろう。何せ、飼い犬がよその人を噛んだわけで、犬はかなりフラストレーションを与えられていたのかもしれないと思うと、いい人のわけがないだろう。すべて憶測でしかなく、ちょっと残念で、なんといっていいかわからない事件だった。
しかしたいていは動物に癒されている。とくに大きいサイズの犬でドンとしているタイプはたまらなく頼りがいのある感じでいいのだ。