理想の食事ーIdeal Diet

ホリデーシーズンでOT(作業療法士)チームのオフィスは年始まで私一人なので、いつもは相棒のOTA(作業療法士アシスタント)が担当しているレジデントを、時間の許す限り私が担当している。

その一人に97歳の素敵な女性がいる。30分間施設内をウォーカーを使って歩くのを、私は念のため車いすを押しながら、片手は彼女の腰に巻いたセーフティーベルトに指を入れてついていく。もちろん、30分間歩き続けるのは体力的にも肉体的にもいろいろ無理があるので、2,3回休憩が入る。

休憩の雑談中、どうしたら97歳でここまできちっとしていられるのか、という質問をしてみた。「まずは、よい食事をすることね。それから、Don't be sorry for yourself」と返ってきた。良い食事に関しては、施設内では難しいと。例えば、バターは乳製品で交じりのない体にいい食べ物であるけれど、施設内ではマーガリンしか出てこないから、きっとそのほかの料理に使っているのもマーガリンだと思うと。それでも、食事が出ていることには感謝しなくてはいけないけれどね、という。

マーガリンは体に悪いともうずっと前から習ったことで、パンにつけるなんてもってのほか、と私は思っているので、この話を聞いてちょっとびっくりした。こんなにヘルシーダイエットのことが言われているのに、やっぱりコスト面で妥協をしているということだろうか。

この話をダーリンにもした。「フランスではありえないことだよね?」と、よくフランスの小学校や学食のクオリティーの高いことがあげられているので、老人ホームでもそうだろうと思って投げかけた。ダーリンもまずないだろうと同意し、「ケベックでもおそらくないだろう」と返す。

ケベック州といえば、スペインのカタロニア同様、「自分たちはほかのカナダと違う」とフランス文化の残る州として、とにかく独立したいという人たちの声がやまない。もちろん独立してやっていけるぐらい産業農業経済がしっかりしているかというと、そうではないらしい(乳産業は大きい)。

 

フランス課税増税に反するデモを見ていて、フランスの民主主義の在り方、ブルジョア階層とのジレンマなどを見せられ、感動さえしていたのだけれど、最近週末クラス代行の帰り道、カルガリーでも小さなデモ隊が2週続けて頑張っているのを見た。それはそれはフランスのデモとは比べ物にならない、おとなしいデモであったけれど、何を言っているのかなあと、車の速度を落として、プレートの文字に目をやると、そこには「ケベック、どうか独立してくれ」と書かれていた。独立問題はともかく、ケベック州の食習慣がいわゆるカナディアンと違って質が高いとしたらうらやましい。

話をレジデントに戻すけれど、もう一つ彼女の言う、Don't be sorry for yourself というのは、自分のことで頭をいっぱいにせずに、ポジティブに、やるべきことをし、変化は受け入れ、感謝して過ごしていく、ということだろうとその後の話を聞きながら理解した。要するに、自分を甘やかさない方なのだろうと思った。97歳でボケることなくいれることはものすごく大きな幸運であり、大事なことだといっていた。

 

最近買ったお気に入りのティーカップで、お茶の時間を一人楽しみながら、教養のある美しい女性からのレッスンを思う。ティーパックがルースリーフであればなおいいが、これは現代の知恵としていいとしよう。