話がやや前後するが、アトラス山脈頂上近くのカフェの映像である。彼がオーナー。最後に見せてくれる天然の輝く石は、リサも私もかなりほしいと思ったが、お値段がかなりするため眺めるだけとなった。
マラケッシュの空港に入るととにかく宣伝されているのがイヴサンローランミュージアム&マジョレルガーデン。いわゆる観光スポットとなるので、ヨーロッパから来ているツアー客のバスが近くに並び、きれいにおしゃれしている日本人の女性グループなんかも見られた。
カナダ西の生活では、とにかくこういうアート系の美術館に飢えるので、どんなに観光客が多くてもここだけは行かせて、とダーリンに押してあった。内容は彼のデッサンの歴史や、オートクチュールの展示、彼の生涯の映像、彼の描いた絵画、映画の中の彼の服と女優達など。
ファッションデザイナーのイヴ・サン・ローランはマラケシュに家を持ち、そこでの生活を愛した。マジョレルガーデンには彼の遺灰が埋められている。ガーデンは、もともとイヴとは関係のない、ジャック・マジョレルという芸術家のものだったが、メンテナンス費やもろもろの問題で、ガーデンを引き離さなくてはならくなる。1980年に、放置状態だったこのガーデンをイヴとそのパートナーが救った。
ガーデンの植物のコレクションは見事なもので、世界中からの植物をコレクションしていた。そしてなにより、このガーデンのシンボルとなっているのは、こんな鮮やかな色は自然界にあるだろうかと思わせるようなブルーと黄色のコントラストで塗られている建物。
南国やビーチ系にあまり行かない私には、バナナの花というのを初めて見てなかなか感動した(写真上)。
ガーデンを歩いていると、暇そうにしている従業員の男性がダーリンに「サラマリコーン」と話しかけてきた。「ワラカサラム」と返すと、まるで「つれた!」といわんばかりに話しかけてきて、庭の勝手な案内を始めた。写真の中央で、赤い丸模様が頭にある鯉が解るだろうか。実はこの鯉はみなもともと日本から来ていて、日本の旗と同じ模様を持っているこの鯉にはジャポンいうなまえがついているらしい。
最後には、ダーリンも私もわかってはいたが、普通なら、「楽しめましたでしょうか。では残りの時間もゆっくりお楽しみください。」と気持ちよく去ってほしいものだが、この男性、手をこする様子を見せじっとして動かない。もともとお金を払う気のないダーリンは、サンキューと厚くお礼を言って手を差し出し握手をした。その時の彼の残念そうな顔といったらない。この出来事は、あとでダーリンが親族に話すのだが、みんな大笑いだった。まあ、日常茶飯事のことなのだろう。
この近くはいわゆるフランス人たちが植民地時代によく住み、よく計画され、観光地化も加わってかなりしゃれている。モロッコのいいところであり、また悲しいところでもある、とダーリン曰く。比較的よく設備された地域というのはフランス人が作り上げた跡地に多い。フランス人が去った後、現地人の力でよりよく受け継げるところを受け継いで、更なる発展につなげられないでいるのがモロッコ全体に言えると。
かなりヨーロッパ風のカフェで一休み。オレンジジュースはいつもしぼりたて。コーヒーには買ったら一つ1ドルぐらいはするよな、と思うようなクッキーがついてきて、こういうサービスがどれだけ私をハッピーにするかは言うまでもない。
モロッコ。先月のクレジット決算で、モロッコのレンタカー会社が100ドル以上上乗せしてチャーしてきたことが分かった。と、それは覚悟の上だったため、ダーリンは準備していた。クレジット会社に連絡して、あれよこれよ討論しなければならなかったが、上乗せされた分は返金された。こういうことの連続だから、まったく誰も信用できない。
いいことで締めくくろう。帰りの日。ダーリンの親戚の一人がブリティッシュエアウェイで働いているとのことで、結婚式であいさつした時、「絶対私に会ってちょうだい、仕事しているから」というので、チェックインカウンターで待つ。知ってはいたがいつもは世話にならない、というダーリンも今回は甘えてみた。ビジネスラウンジを使えるパスを手配してくれ、大変助かった。よくできたラウンジで、飲み物食べ物も豊富で無料。余計な出費もなく、心地よく、しかも贅沢に待ち時間を過ごすことができたのであった。
旅の話はここまで。