結婚式から帰ったら最後の夜をゆっくり過ごそう、とホセとリサを後にしたのが午後4時。8時ぐらいには帰ると思っていた私は甘かった。式は夜中の12時まで続いた。
会場に入ると演奏者が来る人々を歓迎し、写真右奥にちらっと見えているが、レセプションのようなところでミルクとデイツが用意されていた。強制ではないので、スルーしても大丈夫。
式の準備というのをやったことがないのだが、どこも例外なくいろいろ大変そうだった。花嫁のストレスとなっていたのは、ヘアー&メークアップを担当するはずだった人が急にどこかに行くことになり、代理の人を紹介された。ところが代理となった担当者が相当の料金を要求してきたとのこと。その手の仕事をしている友人に頼むとしても、5,6回の着替えをする式中ずっと付き合ってもらう必要があるということで、いずれにしても経費が予想以上にかかってしまうということだった。
姪っ子はトルコ人と結婚したため、トルコで式を一回済ませているのだが、両親の要望もあってもう一度モロッコで、しかもかなり盛大な式を計画していた。なんでも、モロッコでは相場というのが決まっていないらしい。絶対に必要ということに付け込んで、かなりの料金をことあるごとに請求される。姪っ子はトルコの庶民的でオフィシャルなシステムを絶賛し、モロッコのめちゃくちゃさに腹を立てていた。が、無事当日を迎えた。
会場には生バンド。かなり大きな音がスピーカーからなるので、たまに外に出るとほっとすることもあった。このバンドとシンガーの歌に合わせて式中みんな踊る。シンガーが花嫁花婿の名前を歌に合わせて、しかしかなりじらして呼び続ける。どこ?どこ?と一同あちこち見たり、未だか未だかと待たされた果てに、神輿のように担がれて花嫁が登場。美しい彼女と、演出のすばらしさに感動。一同近寄って写真を撮る。
このような感じで、5,6回、衣装や神輿を変えて夜中の12時まで繰り返されるので、最後の方はちょっとみんな反応が鈍る。
会場には子供たちも多く、女の子はとても興味深々。男の子たちは対照的で、席にずっとついている。
花嫁に目が釘付け。お姫様のように感じているのだろう。
モダンな服を着ている子もいれば、民族衣装を着ている子もいるのだが、改めて、民族衣装はかわいいと思った。
日本のように、タイミングよく食事が出てくるわけではなく、アペタイザーや飲み物のサーブがちらっとあり、終わりに近くなってかなりヘビーな食事が出てきた。サーバーたちはオール男性。笑顔というサービスは全くなく、かなり粗雑なサービスなため、この幸せな雰囲気を壊されてはいけないと、なるべく彼らにアテンションをしないようにした。
写真家もいて、大変上手に来ている人たちの写真をとっていた。そしてその場で現像し、映っている人の席に行って配る。いいサービスだと思ったが、ほしければその場でお金を出して買う必要がある、というのを数分経って知った。
花嫁花婿は運ばれてきた後はこのソファーに着く。会場に来ている人々が順繰りに、しかし自由に彼らの横に行って写真を撮る、というわけだ。私も一枚。姪っ子は社交的で頭がよく、笑顔も素敵で話が旨い。近づいて座ると「あれに乗って運ばれているときは、かなりいい気分で楽しいよ」と笑って話してくれた。いろいろ大変なはずだが、肩の力が抜けたように見えるのもさすがだと思った。
私のドレスだが、姪っ子の妹が今日の日のために貸してくれた。ダーリンは「いやだったら着なくてもいいよ」と私に気を使って横から言ってくれたが、なかなか素敵なドレスだったし、みんなと混じっているほうがいいとお借りする。
最後はケーキカットを白いウエディングドレスで。
アルコール飲料はサーブされないので、午後3,4時から来て夜中の12時までみんなシラフ。後半になって多くの女性が化粧直しをしに行くが、いやいや長かった。化粧で直せない疲れた顔はしょうもない。
テーブルではダーリンの弟が、「明日になってみんな口にするのは、どこが悪かった、こうだったと、あら捜しだよ」と笑って話していた。
そして次の日、式の最中にプラスアルファ―の料金を要求されたという話を聞いた。姪っ子の両親ははじめは払わないつもりだったが、あっちはそれによって残りの時間のサービスを変えることができる。払わない手はないことを知っている。 料金に関しては不満だったが、結果として式には満足している、と姪っ子の両親。それにしても、一定料金を払た後は安心してお任せできる日本の式とは大違いで、このようなおめでたい場所でも気を抜けない。どうにかしてお金を儲けようとする。モロッコでは法律家でさえもそんな感じだから、生ぬるい世界で生きてきている私には、とうていこちらの人々の生き抜く力には及ばないだろう。
「自分にアテンションが集中することにはあまり慣れていないけれど、みんなが楽しめる式にしたい」と言っていた、ビジネスオーナー、真のリーダー的素質を見せる姪っ子は、これまた素晴らしい花婿さんと愛に包まれていた。