スークからーSouk

マラケッシュ市内を運転するのはかなり至難の業だと思った。とは言え、車なしでは不便なので早速レンタル。おおむねがマニュアルの車でダーリンのみが運転。何よりバイクや自転車に加え歩く人が勝手に飛び出してくる感じで、車同士も譲り合うどころかぎりぎりまで挑戦してくる感じに見えた。姪っ子の一人曰く、「まったく、車も人ものなにもかも、ここでは誰しもが誰しもを尊厳するということがない」のだそう。いつも荒いなあと思っているダーリンの運転が、ここではピカ一に光って見えた。

マラケッシュの見どころの一つはスーク。メディナと呼ばれる旧市街の建物をそのまま残してある、歴史ある壁に囲まれた場所。スーク(市場)はその中にある。私がいなければ絶対に行かないというダーリンだが、一人では行かない方がいいと連れて行ってくれた。夜のスークはかなり出店も多く、人もいっぱいだそうだが、何よりパーキングにも困るほどものすごい人でごった返しているので、あえて昼間に。

スークに入ると、蛇を首に巻こうと近寄ってくる人、音楽に合わせて一緒に踊ろうと近寄ってくる人、道案内がてらに愛想よく近寄ってくる人と、商売人たちがいっぱい。ダーリンのさばきは早く、ノーサンキューとわざと英語でいって、さっさと目的地に向かって歩く。どんどん中に入ると、どっちを見ても似たような店が並んでいるので、迷路のようでなかなか外に出れない、という人も多い。それを知って本当にうまく道案内をしようと話しかけられるが、例外なくお金を後で請求するようになっている。

 

モロッコ独得のメッキや鉄鋼を使ったインテリアが売っているセクションに入った時、人酔いしかけていた気分が盛り上がった。実は一つだけもしあったらほしいなと思っていたものが、メッキでできた小さめのトレイだった。ここでは「カンカン、キンキン」という工房からの音が奥から聞こえてくる。

「相当会っていない家族のメンバーに挨拶にでも行こう」と突然いうダーリン。従弟だったとおもうが、幼いときはよく遊んだという2人の親戚にあった。ここでお店を持っているのだが、観光客が行ったり来たりするこの狭い通りでお茶をいただいたりして、なんだか不思議だった。もう一人の親戚がさらにいて、結局そこでほしかったトレーをいただくことになる。更に、彼の家族がこのメディナ内の古い住宅に住んでいるというので案内してもらった。なかなか案内なしではいけなかっただろう住宅街は、ダーリンが子供のころはみんなこうだったというような、つくりや機能が昔のままなんだそうだ。

メディナを出るとすぐ近くにコトビアというモスクが見える。朝の4時から5回、まるで歌のように聞こえるお祈りの読み上げがマイクロフォンで市内に流れるのだが、モスク内には信者でないと入ることは禁止されている。お祈り中は警備員も真剣で、近くで子供たちが騒いで駆けていると、「しっ!」と追っ払う姿が見えた。

マラケッシュにいる間はWASOホテルという、ホテルビルと、アパート式ビルの2つがあるところに滞在していた。後から友人たちが来ることを見込んで、キッチン付きの2部屋あるアパート式の方に泊まった。ほぼ寝るだけに帰るホテルだが、ある日ちょっと一人休憩できるときがあった。家族と会っている間は、アラビア語かフランス語が混ざる会話で永遠続くので、いかにこの時間が大事だったかは言うまでもない。TVを付けてチャンネルを回していたら、「牧場の少女カトリーヌ」が流れていた。

ダーリンが幼いころは、「シンドバットの冒険」や「トムソーヤの冒険」がやっていて、いかにそれらのアニメーションを楽しみに見ていたかを聞いていたが、いまだに流れているハウス劇場シリーズ。ヨーロッパではいいチョイスの日本のアニメが流されているのがうれしい。モロッコもその影響だろうと思う。北米のアニメのチョイスとは全く違う、私の好きだったアニメーションが流れる環境。見ている子供たちは、これが日本のアニメだということは知らないかもしれないけれど、日本の文化のすばらしさをまたも確認するひと時だった。

 

次回はいよいよ4人で南へ向かう旅を。