泥棒ーThief

朝、スタジオに着いて鍵を開けようとすると、あれ、という感じがした。スタジオは2ドアになっていて、はじめのドアを開けると右手にスタジオ、正面に理学療法院、左手にはよくわからないけれどドアがある。正面鍵は少なくとも2つのオフィスがシェアしているから、まあ、鍵をかけ忘れたのかな、と思った。

そしてスタジオの鍵、こちらも「あれ」という気はしたのだが、習慣的に鍵を入れて回る方向に回すから、開いていた気はしたが不確かだった。

 

昨日と今日の二日間、オーナーがビジネスがらみで出かけており、代行を頼まれていた。そんなオーナーが昨日の夜にスタジオに何かしに来たのかなと最初は思った。明らかに「やりっぱなし」という感じで、ビニールに入った雑巾が出ていたり、入り口のコーヒーなどのキッドが入っているキャビネットの扉が開いていたり、それほど荒れた様子もないけれど、かなり急いでいたかな?という感じはあった。さらに驚いたのは大きな壁にかかっているボードが外れて傾いていることであった。

 

そして、昨日の今日で続けて出勤するからと、いつもは持ち帰る室内履きスニーカーをテーブルの上に置いておいたのだが、そのスニーカーも巾着ごとない。何かおかしいとは思いながら、邪魔だからとどっかにしまわれたかな、といろいろ探すがみつからない。やっとオーナーにテキストメールをして、鍵もかかっていなかった感じがあると書こうと思ったとき、ハッと気づいた。実は鍵は、私ともう一人のインストラクター以外は、外のマスターキー入れに入った鍵をシェアしている。慌てて外に行ってマスターキーを確認すると、案の定、壊されて中の鍵がとられていた。

これはテキストどころではないと、緊急に電話。朝の7時頃だった。カルガリーを離れているオーナーであったが、即座にフィアンセに電話をし、ポリスレポートを提出する手続きをし、ロックスミスに鍵の取り換えの連絡をとってくれた。

プライベートのクラス中に警察官がひとり来て、ちらっと事情を私に聞いた。この傾いたボードの横には電圧のスイッチがあるのだが、どうやらそれを金庫と思ったか、このボードの裏に金庫が隠されていると思ったようだ、といった。明らかに現金を探していたのだろうけれど、ほかに金目の物は何も取らず、なぜか私のスニーカーを取っていった犯人。巾着でてきた友人の手作りの靴入れ袋がかわいかったのだろうか。

 

ところが、3本目のグループクラスの常連のクライアントさんもロッカーに靴を置いたままでいたらしく、彼女の靴も取られていることが分かった。私と彼女のサイズは同じ7.5。靴・・・か。必要機材にダメージもなければ損失もない。クラスをなんともなく続けていけるから不幸中の幸いともいえる。しかしよりによってたまたまおいていった靴を取られるというのも面白い。

それから、ガラスをわってはいるのではなく、ちゃんとマスタ―キーだけを壊して入るというのも、なかなかこちらの落ち度をしっかりにぎりながら上品に入った気もする。

 

なにはともあれ、油断禁物。ちょっぴりぶっそうで夜のクラスはきをつけなくてはと、改めて感じる事件であった。