元旦の日、多くのカナダディアンが冬のホリデーシーズンの休暇中、ウィンタースポーツを楽しむ。最後の休暇である元旦の日も、お金をかけずにスノーシューやクロスカントリースキーを、友人、家族、または一人で多くが行っていた。大半は白人たち。ドライブがてら行って、ちょっと歩こうかぐらいのノリでハイクをした私たちは、なんだかんだで2時間以上迷いながら歩くことになった。
スノーシューも履いてなくて、いつも登るコースは無理だと思ったので、少し緩やかな場所を歩いていた。そしてたどり着いたのは、クロスカントリースキー用のコース。来た道を戻るより、しょうがないこのコースをたどって帰ることにした。
後々解ったことだけれど、ちゃんとしたルートでこのコースに入ろうとすると、スキー者用のコースはハイキング禁止のマークがついている。でも、どこからか歩いてたどり着いてしまった私たちは、そんなことも知らず、ただただ駐車場めがけて帰りたい一心だった。
しばらくしてある男性が一人向こうからクロスカントリーをしながらすれ違う瞬間、「ハーイ」とニコッとあいさつした私に返事するでもなく、何かを言った。解らなかったので聞き返すと、私の靴を指さして、「これ!このことを言っているんだよ。これでこのコースを歩かないで!スキーがとってもしずらくなるんだよ。」と立ち止まって忠告する。といわれても、もうだいぶ来ちゃったし、どうしろというんだろう、と途方に暮れ驚いている私だったが、そんな横をダーリンが無言でとっとと歩いて行く。
その男性は私たちに来た道を戻ってほしかったようで、「あっそう。全然協力する気はないんだね。」と捨て台詞まではいていた。なんとなく気分が悪くなったが、どうすることもできず、駆け足でダーリンを追いかけ私もその場を去った。ダーリンは「なんてあほな奴なんだ」といってまったく気にしない。
その後、スキーヤーがどんどん来て「やっぱりなんか邪魔だよな、私たち」という気になって、ものすごく肩身の狭い気持ちで歩くことになった(私だけ)。やっとほかのルートに抜けれるというとき、後ろから滑ってきたカップルのうちの女性の方が、「次回は、お願いだからスキーフィールドに入り込まないでね。」と言い放っていく。
「ごめんなさい。ちょっと迷いっちゃたので。」というのが私。「オープリーズ、スノービッシュ(偉そうにいうなよ、という感じかな)」と半ば聞こえるように言うのがダーリン。
私たちとすれ違った多くのスキーヤーが、同じことを思ったには違いないだろうけれど、中にはそれでもにっこりとあいさつを交わしてくれた人もいる。「駐車場はこっちでいいのかな?」とダーリンが聞くと「そうです。数キロメートルでこの先を行けばつくはずよ。」とただ教えてくれた。
わざとじゃないからしょうがないことでも、わざわざ忠告をしてくる人と、優しく見逃してくれる人。まあでもねえ、お金を払って入っているスキー場ではないわけだし、日本人の私からすれば元旦早々、そんなこと言わなくてもいいんじゃないの?と元旦の重みを思う。どうしても失礼な言い方という感じに聞こえることがよくあるカナダの社会(日本でもあるだろうけれど)。失礼に言い返す、というのは時として必要かもしれないけれど、できるだけしたくないな、というのが日本の心。それが彼らに通用しなくても。一番いいのは気にしないという、ダーリンの態度を見習うことかもしれない。