日本の12月はまだ銀杏が輝いていた。こちらは全く期待を裏切らずホワイトクリスマス。今日はすでに-14℃が最高。今夜から更に気温が下がり、クリスマスの日は-18℃が最高で、最低が-28度、か。すべてが凍っているのではないかと思う程の数字。
さて先週と引き続き、松平さんのお話。松平家では毎年12月29日に大掃除の日で、小さな時から「いらないもの」と「いるもの」の区分けをする箱を与えられて、自分で片づけをしなくてはならない。
ある年、まだよしこさんが小学生の時だった。間違えて国語の教科書を「いらないもの」のほうへ入れてしまった。翌年学校が始まりハッと気づく。しょっぱらの国語のクラスではもちろん「よしこさん、教科書をどうしましたか」と先生から問いかけられる。「忘れました」は一日目はよかった。家に帰り、母親に間違えて教科書をいらないものに分けてしまったので返してくれと頼むと、あっさり断られたという。
困ったなあ、と思ったものの、どうすることもできず、2日目、3日目と国語の先生に同じように答える。「忘れました」。これがほかの授業ならまだよかったかもしれないけれど、国語はほぼ毎日ある授業。 3日目はさすがに先生も怒る。真っ赤な顔をして、「自習しなさい」といって教室を出て行ったという。
クラスのみんなはまだ子供だから、何が何だかわからずわいわいがやがや。よし子さんも、あの優しい先生があんな顔して怒ることもあるんだなあ、と思ったぐらいだったらしい。しばらくして、にこにこ笑顔に変わった先生が戻ってきた。そして、「よしこさん、これは家にもって帰ることはできませんが、授業中だけは使ってよろしい。」と、教科書を手渡した。後にわかったことだそうだが、先生はよし子さん自宅に電話し、よしこさんの母親と会話をした。よし子さんの母は先生に「教科書なしで今年いっぱいは指導をしてください。松平家では毎年大掃除の日に自分で片づけをします。あの子は自分でいらないものとして教科書を区分けしたのですから、いまさら返すわけにはいきませんので。」というように事の成り行きをあっさり説明したそう。
よし子さんは、この一件から後悔をするという経験は必要である、と説いた。つまりすぐあと戻りできる、という心構えは甘いということだろう。翌年からは、ものすごく気を付けて片づけをするようになったというお話だった。
さすがに武家の教えは潔いというか、覚悟が違うというか。武士は剣を抜くときはぐっと剣の持ち手に手を添えて構えるけれど、その時はしっかりと力を入れて握っており、「そこをどかぬというのなら、命を頂戴するしかないのです。それでもどきませんか?」というぎりぎりの選択を責めている、というようなことを言っていた。そして「抜いたら最後」なのだそうで、心に迷いがあったり何をしているかわからない人ほど、剣をチャラチャラバンバラと振るうと。
大掃除。カナダ人の日本大好きという娘さんを持っているクライアントさんから、「日本ではナショナルイベントとして年に一回クリーニングの日があるんですって?」と問われた。そう・・・だったよな。もう一度あの習慣を見習おうか。